働くキャッシュカウ

財務分析を通じて高配当株に長期で投資し、投資先が生み出すキャッシュを分けてもらっています。

九州電力 2016年3月決算 復配へ

 今週は大勝負を継続中の九州電力から決算発表がありました。先に発表されていた東北電力北海道電力の決算が好調で、期待していました。

 結果としては、九州電力の決算もかなり良かったです音譜

 決算短信を詳細に分析してみたいと思います。

 売上は18兆3569億円で、微減でした。発電量、電気代ともに下がったのが反映されています。営業利益は1202億円、経常利益は909億円でした。両者の差額はほぼ支払利息393億円が占めます。純利益は734億円で、通期予想の527億円を大きく上振れました。1株当たり利益は155円で、現在の株価1,112円はPER7.2倍です。これはかなり割安だと思います。

 総資産は4兆7482億円で昨年度末から減少。純資産は4,999億円に増加して自己資本比率は10%台を回復しました。

 有利子負債の合計額は3兆2,248億円で、まだまだ多額ですが、その前の期末よりも1,130億円減少しています。積極的に借入金を返済している印象です。個人的には借入金を削減する保守的な財務は高評価です。

 財務体質は着実に改善していますねアップ

 営業キャッシュフローは充分に出ており、問題ありません。

 配当金は普通株に対して年間5円でした。20円前後は出してくると期待していましたが、熊本大地震もあり、やむをえないですね。優先株には累積未払いも含めて、71億円を配当です。合計で100億円弱の払い出しです。

 一般に配当を出すためには単体ベースで利益剰余金がある必要があります。利益の蓄積から配当しなさいという会社法の原則ですね。ただ、九州電力は連結ベースでは利益剰余金があるものの、単体ベースでは1,079億円の繰越損失を抱えていました。これを昨年度の利益である程度は埋めたものの、まだ426億円の繰越損失となっています。

 このため、今回の配当はその他資本剰余金から支払われます。資本の払い戻しと同様の効果があるので、配当課税は軽減されると思います。また、北海道電力のような優先株の買い戻しはありませんでした。

 今期は、まず玄海原発を再稼働して利益を底上げしていくこと、それにより単体ベースでの繰越損失を解消することが必要ですね。支払利息が393億円と大きいので、マイナス金利の浸透もこれに貢献できそうです。剰余金が積み上がってくれば、増配や優先株の買い戻しなど、財務上の選択肢が増えてくると思います。

 長期的に見ると、会社の経営計画では、2030年には海外で500万kw、域外で200万kwの発電量を持つとしていますから、これが実現すれば、今後かなり成長していくことになります。まずは今月始まった首都圏での契約件数が楽しみです。

 逆に、今回の決算で問題だなと感じたのは繰延税金資産の多さです。1,661億円も計上されており、純資産の3分の1程度になっています。今後も継続的に利益を上げていけば問題ありませんが、一度経営が傾くと業績が大幅に悪化しそうです。

 不思議だったのが重要な後発事象が該当なしだったこと。熊本地震の被害は大きそうだから言及があるかと思っていました。これは理由は不明です。

 関電の原発稼働差し止めや熊本地震など、予想外の事態が連続する中で、ここまで投資を継続できて、復配と財務の改善を見届けることができ、安心しています。財務の改善が継続する限り、株価の上下に関係なく、保有を継続していきます。