今週は九州電力が新株予約権付社債の発行を発表しました。
言葉にできない怒りを感じました。
九州電力が発行するのは3年と5年の新株予約権付社債で、転換価額はそれぞれ1,434円と1,471円です。新株に転換されると株式価値に20%以上の大幅な希薄化が生じます。調達資金の使途は、新たな火力発電所の建設、海外の地熱発電所の建設及び社債の償還です。
新株予約権付社債は株価が転換価額を上回った場合でも、社債を放棄すれば転換価額で新株を取得できます。転換価額と株価の差額が投資家の利益になります。逆に株価が下回る場合は、新株予約権を行使せずに社債として償還を受けることができるので、元本は確保できます。
他方、転換価額を上回って新株が発行されると、既存の株式の1株当たりの価値が下がるため、既存の株主の利益を毀損します。
厳密に言えば、転換社債で調達した資金で現在よりも高い利益率を実現できれば、既存の株主も被害を被ることはないのですが、今回の使途を見る限り、高い利益率は期待できません。それどころか、低金利下の社債を償還して、将来的にコストの割高な新株を発行するので、既存の株主の負担は大きくなります。
九州電力は、新株予約権付社債にすることにより、金利負担を抑えて資金を調達できると説明していますが、この低金利下で微々たる金利を節約するのと引き換えに株式時価総額を大きく吹き飛ばしたことは全く正当化できないと思います。
そもそも九州電力は川内原発の再稼動以来、有利子負債を順調に削減しており、資金が必要であれば社債を発行すればいいだけです。新株予約権付社債の発行は到底納得できません。
これまで原発の再稼動が遅れ、熊本地震や鹿児島県知事の再稼動反対などもあって、株価は低迷してきましたが、全て外部要因であるため耐えてきました。今回の転換社債の発行は会社の経営陣が決定したことで、質が完全に異なります。経営が厳しい時期を支えてきた既存の株主の利益を吹き飛ばすことを理解した上で、会社が意図的にやったことなので。
本当にどうしようもない経営判断ですね。感情的になって投資判断はしないので保有を継続していきますが、心底失望しました。