働くキャッシュカウ

財務分析を通じて高配当株に長期で投資し、投資先が生み出すキャッシュを分けてもらっています。

九州電力 2019年3月決算 増配続く

 今月は九州電力の財務関係のIRが相次ぎました。良いもの、悪いものが交互に来て、株価にも大きな影響がありました。

 まず4月16日に、前期の業績予想の修正が発表になりました。売上が2兆150億円と100億円減少し、経常利益は300億円減の500億円、純利益は250億円減の300億円、1株当たり利益は108円から56円に半減となりました

 下方修正の理由としては、千葉袖ヶ浦火力発電所の断念、地熱発電調査の断念、海外投資に係る損失が挙げられていました。

 利益半減のインパクトは大きく、株価は発表前の終値1,223円から発表後の終値1,182円に急落し、その後も下げ続けて、今週は1,077円で引けました。

 続いて4月22日に、優先株の再編が発表されました。日本政策投資銀行向けの1,000億円の優先株を再編し、日本政策投資銀行に400億円、みずほ銀行に400億円、三菱UFJ銀行に200億円の優先株を発行し、利率を3.5%から2.1%に引き下げるという内容でした。

 九州電力側は優先株をいつでも買い戻せるが、引受先は取得から5年を経過するまでは買取請求できず、日本政策投資銀行優先株を発行してから5年近く経つので、払い戻しを防ぐために再編したようですね。

 ただ、これは九電側にかなり有利な再編ではないかと思いました。5年前に比べると財務が改善してリスクが小さくなっているものの、利回り2.1%だと投資家側の収益はかなり小さくなります。再編発表時点でも普通株の利回りを下回っています。政策投資銀行は九電に融資もしているでしょうから、支援を継続するために応じたのではないかと思います。

 優先株は、他社のように少しづつ買い戻していくのかと思っていましたが、全体的に再編して利率を下げるというのは予想していませんでした。ただ、悪くない手だったと思います。

 そして、週末に通期の決算が発表になりました。業績としては、下方修正された際の予想とほぼ同様でした。減益の理由としては、原発の検査費用や送配電設備の保全費用が増加したことも説明されていました。

 有利子負債は前年から200億円ほど減少し、3兆2337億円となっていました。設備投資が続いているため、なかなか減りませんね。

 当期の業績予想は、前期の当初予想と同額で、経常利益が800億円、純利益が550億円、1株当たり利益が113円。配当は10円増配し、40円となります 

 これは素晴らしい

 株価が下がって、転換社債の権利行使価格をかなり下回っているため、増配してくるだろうなと感じていました。増配を契機に株価がかなり上昇してもまだ株式への転換がなされず、無金利で資金調達をしている状態を継続できるので。

 財務構造としては、資本金に加え、優先株が1,000億円、転換社債が1.500億円あり、調達コストはかなり低いように思います。来年の3月になると転換社債のうち、750億円が返済となるため、それまでは株価は1,300円台に抑えられるかもしれません。

 財務が順調に回復してくれば、転換社債の返済や優先株の買い戻しが進むんでしょうが、原発の安全施設の建設遅れにより、来年になると川内原発が停止しそうです。当期の業績予想でも原子力発電量が前期よりも下がっており、影響が出ています。これはかなり厳しい状況ですが、原発が2基体制の時代も配当は出せていたので、長期的には、まあ、なんとかなりそうですね。ただ、来期の増配は難しいだろうな

 とりあえず増配となり、現在の株価だと配当利回りは3.7%となります。いずれ復配し、高配当株になるだろうと期待して大きな投資に踏切り、4年近くが経過しようとしていますが、めちゃくちゃ波があったものの、無事に高配当株になりました。評価損が大きくなっていますが、方向としては当初の狙い通りに進んでいるから、いちおう成功なんでしょうね。配当を得ながら、保有を継続していきたいと思います。